自分に還るヨガと瞑想 – 健康の視点から(2)脳が変わる
今回は脳の柔軟性についてお話します。
次のような研究結果があります。
ヨガや瞑想を定期的に練習することで、脳細胞が新しいコネクションつまり「新しい神経回路」を形成して、脳の構造そのもの、そして、その機能に変化が現れるとされています。機能の変化による効果としては、学習や記憶といった認知能力が向上します。つまり、記憶力や注意力、気づき、思考、言語などを司る脳の部分が活性化されます。
これは脳の可塑性、脳のプラスティシティ「Plasticity」と呼ばれる現象です。わかりやすい言葉で言うと、脳の柔軟性ですね。
MRIなどの検査では、ヨガをしていない人と比べて、定期的にヨガをしている人の脳では、情報処理を担っている大脳皮質や、学習や記憶を司る海馬が、より厚いことが確認されるそうです。このエリアは、年齢を重ねるにつれて萎縮していくと考えられてきたそうですが、ヨガを定期的に練習する高齢の方の脳は、ヨガをしない同年齢の方と比べて、この萎縮の進行が進んでいないという結果もあるようです。
だから、高齢になるにつれて問題となる記憶や認知能力の低下に対処することができるのではと提案されています。そういえば、認知症予防のための脳トレなどはよく知られていますが、ヨガも一役買いそうですね。他にも、ヨガや瞑想は、理由付け、意思決定、記憶、学習、正確性などといった脳の高次元の機能の向上にも役立つと言われています。
脳の視床下部と自律神経の関係を見てみましょう。
視床下部とは、自律神経や内分泌系の調節を行っている司令塔です。ヨガや瞑想を練習することで、視床下部の後部、つまり交感神経のエリアが抑制されると言われています。この部分が抑制されると、ストレスの刺激に対する体の反応が最適化されて、ストレスと関連した自律神経の反射メカニズムが元の状態に戻ります。つまり、恐れ、攻撃や怒りに反応するエリアの働きが抑制され、脳の内側前脳部分にある喜びや至福と関係する場所が刺激されます。よって、不安が和らいで、心拍数や呼吸数が落ち着いて、血圧が下がるというメカニズムになっています。
ヨガをすることで、このようにして、感情が落ち着き、心の平穏が達成され、リフレッシュを味わい、健全な感覚が蘇ってきます。これは、長期的にみると、自信にもつながり、ポジティブな人生が展開していくこととなります。
メンタルヘルス向上とも関係する話ですが、ヨガや瞑想では、ストレスや精神疾患に真正面から立ち向かうのではなく、定期的に練習を続けることによって、体の内側から自然な変化を起こして、良い効果を積み重ねていくというやり方ですね。似たような治療として、マッサージや音楽療法など、その他たくさんありますが、ヨガの効果は長続きしやすいという研究結果もあるようです。
中口朋子
ポッドキャストでお話した内容を元に書いています。ポッドキャスト #26 #27 #28 でもお聴きください。